潜在意識で書く~『私の消滅』中村文則さん
これまでの人生で、睡眠と仕事を除いて一番時間を費やしたことと言えば、間違いなく「読書」です。
ただこの10年くらいは、読書の中でも「小説」はあまり手を出さないでいました。なんか、「小説を読んでも、時間だけつかって、しかもお金にならない」みたいな、非常にさみしくかなしい呪縛にとらわれてました。つい最近まで。
大学院が一段落して、今年は「やりたいことしかやらない!」と思い、絶賛小説読みまくりモードに突入しています。
そのきっかけとなったはあるテレビ番組なのですが、それはまた稿を改めます。
とにかく、独身時代は毎日1冊何かしらの小説を読んでいたおねーちゃんが、年を重ねたおばちゃんになってあらためて小説を読んでみると、昔より経験もつんで、内面も複雑化しているからか、昔は小説の世界に飲み込まれていたのが、逆に自分の中にその作品を取り込んでいけるような感じがして、おもしろさの質が変わってきた気がします。
そのあたりもまた今度時間のあるときにつらつらと書いてみます。
さてさて、数々の文学賞や映画化など、話題の作家 中村文則さん。
人気すぎる作家さんなので逆に手を出すのを少し躊躇してしまっていたのですが、「人生に、文学を」というサイトがあることをたまたま知り、こちらの講義の講座を見るために、
「人生に、文学を」オープン講座 in 上智大学 四谷キャンパス 2017年5月20日(土) 第6講 中村文則さん「文学との可能性と面白さ」
一応、課題図書となっていた『私の消滅』を読みました。
作家の方が、どういう意図で書いたかという、いわゆる意図開きをきける機会というのはなかなかなくて、本を読んでからの講座動画は、とてもおもしろかったです。
この作品は、プロットがかなり複雑なのですが、中村さんはそれを「小説脳」を使って書いたといいます。
「小説脳」というのは、無意識で書いて、意識で伏線を拾っていくということで、これは15年の小説家としての経験があるから、無意識が構成を作っているということだそうです。
これ、すごくわかるなあと。私は作家ではないですが、経験を重ねていると、直感的に「これ」というのが先にきて、後から理由がわかるみたいなこと、結構あります。
芥川賞のこちらの作品も、絞り出して書いているような感じで引き込まれました。
書評なんてものは書けなくて、さらっとした感想程度ですが、備忘録として。