日々是流流

“細工は流流仕上げを御覧じろ”~より善く生きるためのその時々の記録です。

映画『パラサイト』を観て、ぼやぼや思考にメスを入れる

1月の終わりに映画『パラサイト』を観に行きました。

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仕事が一段落して気晴らしのためだったので映画ならなんでもよかったのですが、たまたま知人のfacebookのポストで『パラサイト』を観て驚愕した!と書かれていたので、観ることにしました。
だからどういう映画なのかも、世界中で話題になっているということも、そのときはほとんど知りませんでした。


映画の内容は、韓国の行き過ぎた格差社会が生む「ひずみ」を描いていて、前半はややコミカルに、後半は予想外の展開で観客を呑み込んでいくような感じでした。「え?どうなるんだろう?」と最後まで目が離せないというか。

そして、観終わってすぐ、是枝監督の『万引き家族』を思い出しました。
後味はまったく違うけれど、『万引き家族』がカンヌでパルムドール賞を受賞した際に、「見えない人々(invisible people)」を扱った映画と評されたように、社会からこぼれ落ちた人たちを扱っていたからです。


その後、このハフポストの記事を観て、そういうことねと納得をしました。

www.huffingtonpost.jp

ポン・ジュノは『パラサイト』を語るときに、ケン・ローチの『わたしは、ダニエル・ブレイク』と是枝裕和の『万引き家族』をあげている。ともに近年のカンヌ映画祭パルム・ドールを受賞した作品だ。3作に共通するのは、各国における格差社会と、それに翻弄される家族を描いている点だ。

これらの作品がここ3年ほどの間に発表されて注目されてきたのは、けっして偶然ではない。すべて新自由主義の社会政策を推し進め、その結果として経済格差が拡大した国で生まれた映画だ。

小さな政府を目的とする新自由主義において、それがわかりやすい残酷さとなって露呈するのは社会保障と教育である。映画の登場人物たちは、苦しみ、抗議し、暴動を起こす。映画から発せられるそのメッセージは、極めてストレートだ。

 

新自由主義とは?
新自由主義とは、市場(経済活動)への国家の介入を最小限にするべきと考える思想で、小さな政府、民営化、規制緩和といった政策を目指す経済思想
小泉純一郎政権で行われた郵政民営化などの一連の政策が、新自由主義的政策として知られています。

liberal-arts-guide.com

 


以前、このブログで学歴の壁や地域格差についての投稿をしたことがあったけど、

flow.hatenadiary.com

格差について考えようとすると、私の思考はいつも「もや」がかかったようになる。自分が富裕層や学歴強者ではないので、「社会システム」をつくり出す側のエリートの世界の実態を知らないからなのか?と思っていたけれど、そもそも社会のしくみそのものをあまり知らないからだろう。思考停止というか、思考ぼやぼや状態になる。


そんな状態な自覚はありつつも、ひとまず、ハフポストの記事で言及されていたケン・ローチ監督の『わたしは、ダニエル・ブレイク』をまだ観ていなかったので、primeビデオで観てみました。

そして、なんとももどかしさを感じました。
なぜまじめに生きているはずの人も、まじめに仕事をしているはずの人も、時間とお金を使ってまで、お互いに不幸に向かっていかなくてはいけないのか?


こちらの著者のブログが当を得ていて映画のメッセージをわかりやすく伝えてくれていました。

hirokimochizuki.hatenablog.com

ケン・ローチパルムドールの受賞スピーチでこう語ったそうだ。

「映画にはたくさんの伝統がある。その一つは、強大な権力を持ったものに立ち向かう人々に代わって声をあげることだ。そしてこれこそが、私の映画で守り続けたいものだ。」

 

人と人との支え合い、よりドライな言い方をすれば私人間の助け合い、それはあればあるほど良いものだ。ただ、それが本質的にとても脆弱で、弱い者がそれを求めることに躊躇する、申し訳ないと思う、恥を感じるものであるということも決して忘れてはならない。

最後の砦は国家である。たとえそれが憎々しい官僚主義に毒されていてもそうなのである。しかし、同時に、人はただ生きるために生きているわけではなく、尊厳の維持と公的扶助の申請とがある種のトレードオフに入っていく瞬間を見逃すこともできない。

 

以前、ハンナ・アーレントの『人間の条件』の読書会で、

国家とは何か?
国民とは誰か?(何によって国民というのか?)

ということについて対話があったのですが、

そもそも人権は誰が誰に保障しているのか?というと、
国家が国民に保障しているが、それは国籍がある人が前提。
さらに、福祉国家は経済発展がないと成り立たない。

福祉国家が壊れると、ナチスドイツのように全体主義に向かう。
つまり、国家は排除する莫大な人を前提としている。

というような話がありました。

日本でも、戸籍のない人、まさに「見えない人々(invisible people)」が1万人以上いると言われています。

台風のときのホームレス受け入れ拒否のニュースなど、顕現している「ひずみ」だけでも相当なものです。

短絡的な救済や福祉を叫ぶのではなく、「ひずみ」を生む社会の仕組みについて、とにかくもっともっと知らなければなりません。

 

【ここからお知らせ】

●2/22(土)午前 「人を巻き込む力を高める!」ワークショップ
http://world-cafe.net/event/post-128.html

「やらないと絶対にわからないけど、やると学びが深く、やった後1ヶ月経ってもじわじわと気づきが来る」と評判です。ぜひ一度体験してみてください。


●2/22(土)午後 「こじらせ自己啓発への処方箋」ワークショップ
http://world-cafe.net/event/post-129.html

「とことん、自分じゃない誰かになりきってみる」という体験を通して、自分を見つめ直していきます。